これは前橋市長選の行方に強い関心を寄せている方へ向けた記事です。2024年2月に「保守王国」群馬の「地殻変動」の象徴として初当選した小川晶氏が、わずか数か月後、市職員とのラブホテル面会問題という不祥事による辞職を経て、異例の出直し立候補に踏み切りました。
前橋市長選は、この小川晶氏の再選が果たして実現するのかどうかに、全国的な注目が集まっています。
前回の選挙で現職を破った要因は、保守分裂と山本市政への「閉塞感」が勝因にありましたが、今回は状況が一変しています。小川氏を後押しする支援者の「市政続行」要請がある一方で、群馬県の山本一太知事が断言「個人的な恨みはないが、再選はあってはならない」と表明し、保守勢力の再結集を促す強力な逆風が吹いています。
また、伊東市長選で田久保真紀氏は落選しましたが、小川氏の再選の鍵を握るのは、市民が彼女の「資質」と「実績」(小中学生の給食費無償化など短い任期の実績を含む)のどちらを重視するかという点です。
新たな対立候補:弁護士と元市議の三つ巴の構図となった今、注目の前橋市長選挙の行方はいかに、前回勝利の要因は?小川晶氏が「保守王国」を破り再選を狙うことができるのかどうか、詳細に検証していきます。
この記事のポイント
- 小川晶氏が辞職後、出直し立候補に至った異例の経緯と理由
- ラブホテル問題が市長の倫理と資質に関わる重大な責任問題であること
- 前回選挙で小川氏が勝利した「保守王国」前橋の構造的な背景
- 今回の選挙で小川氏の再選を阻む知事の発言や保守票の再結集の動き
前橋市長選:小川晶氏の再選は果たして実現するか?
不祥事による辞職と異例の出直し立候補の経緯
前橋市長選挙及び前橋市議会議員補欠選挙は、2026年1月5日(月曜日)に告示され、1月12日(月曜日)成人の日に投開票が行われます。市長退職に伴う異例のダブル選挙となった今回、前橋市長の小川晶氏が辞職し、その後の市長選挙に出直し立候補するという経緯は、日本の地方自治史上でも極めて異例の出来事です。まず、小川氏は2024年2月の前橋市長選挙で初当選を果たし、1892年の市制施行後、初めての女性市長として注目を集めました。弁護士出身であり、群馬県議を経て当選した彼女は、従来の「保守王国」の構図を打ち破ったリベラル系のエースとして期待された背景があります。しかし、就任後わずか数ヶ月で、既婚の男性市職員と複数回ラブホテルで面会していた問題が週刊誌報道などによって発覚いたしました。これは、市長という公職にある者としての公私混同にあたるとして、市民や議会からの批判が集中したのです。この問題を受け、小川氏は事実関係を認めた上で、公の責任を取る形で市長を辞職するに至りました。一方で、辞職後も彼女を支持する勢力は根強く残っており、一部の支援者や元市議、町長などが中心となり、「小川あきらを再選させる会」を結成しました。彼らは、小川氏が短い任期中に実現させた小中学生の給食費無償化や農業支援といった実績を強調し、市政を途中で諦めてはならないと再出馬を強く要請したのです。このような状況下で、小川氏も「市民のための市政を諦めることはできない」と意欲を示し、最終的に出直し市長選への立候補を決断するに至りました。これは、不祥事による辞職という「負」の側面と、実現した政策に対する「続行」の期待という、二つの極端な要因が絡み合った結果と言えます。
【前橋市長が辞職】出直し選挙への出馬は…
— 報道ステーション+サタステ (@hst_tvasahi) November 27, 2025
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前橋市の小川晶市長が25日に提出した退職願が全会一致で可決され、11月27日付で辞職が決まった
小川市長は、既婚の男性職員とホテルで複数回会っていたことが9月に発覚。続投の意向を表明していたが、市議会の多数の会派から辞職を求められていた… pic.twitter.com/U8kVtoUYH2

市職員とのラブホテル面会問題の波紋と責任
小川晶前市長が引き起こした市職員とのラブホテル面会問題は、前橋市政に大きな波紋を広げました。市長は市政のトップとして、市民の信頼の上に立って公務を遂行する立場にあります。そのため、たとえプライベートな問題であったとしても、公職の倫理と品位が問われることになります。問題となったのは、既婚の男性市職員との複数回にわたるホテルでの面会です。当初、小川氏は報道に対し、面会の事実を認めつつも、具体的な内容については多くを語ろうとしませんでした。しかし、この行動が「素直に非を認めない姿」として、かえって有権者の不信感を高める結果となったのです。この面会問題は、単なるスキャンダルに留まらず、市長の公私混同、さらには市政運営における規律や信頼性の問題へと発展しました。特に、市長が市職員とこのような関係を持つことは、組織内部の公正な人事や指揮系統にも影響を及ぼしかねません。本来は、市長には市民に対して明確な説明責任と、高い倫理観が求められます。小川氏は引責辞職という形で一旦は責任を取りましたが、その後すぐに出直し立候補を決めたことで、市民からは「本当に責任を取ったと言えるのか」「反省が足りないのではないか」といった厳しい声が上がっています。多くの市民は、実績の有無にかかわらず、トップの倫理観こそが市政の根幹をなすと考えているため、この問題の持つ負の遺産は、今回の再選の大きな足かせとなることは避けられないでしょう。
小川氏を後押しする支援者の「市政続行」要請
小川晶前市長が不祥事により辞職したにもかかわらず、出直し立候補へと踏み切れた背景には、彼女が推進した政策に対する強い評価と、支援者たちの「市政続行」を望む熱意があります。短期間の在任期間でしたが、小川氏は小中学生の給食費無償化や農業支援など、市民生活に直結する政策を次々と実行に移しました。これらの施策は、特に子育て世代や第一次産業に携わる層から高い支持を集め、市政の変革を体感させたと言えます。このため、小川氏に近い市議や首長、支援者ら約300人が集結した集会では、彼女の政策実績が強調され、辞職したことは惜しまれるべきではないという意見が中心となりました。言ってしまえば、支援者たちは小川氏個人の不祥事よりも、彼女が進めようとした「市民のための市政」が中断してしまうことのほうが、前橋市にとって大きな損失だと判断したのです。集会で、支援者らは再選を目指して出馬するよう直接要請を行いました。これに対し、小川氏は一連の問題を謝罪しつつ、「悩んでいたところに一つ大きな後押しをいただいた」と語り、出馬に前向きな姿勢を示したのです。しかしながら、この支援者集会が非公開で行われた点や、支援者の熱意が市民全体の総意であるとは限らない点には注意が必要です。たとえ実績があっても、公職の倫理に反する行為は許されないと考える市民も多く、この「続行」要請が、再選を望まない層からの反発を強める可能性も秘めています。
山本一太知事が断言「小川氏の再選はあってはならない」
群馬県の山本一太知事が、小川晶前市長の再選阻止を明確に断言したことは、今回の前橋市長選の構図に大きな影響を与えています。山本知事の発言は「個人的な恨みはないが、再選はあってはならない」というもので、これは小川氏が前回、知事が支援した候補を破り初当選した経緯を超え、公的な立場から今回の不祥事に対する見解を示したものです。山本知事は、群馬県の「保守王国」の重鎮であり、その発言は自民党県連や保守層に対し、非常に強い影響力を持っています。このため、今回の市長選において、保守勢力が結束して小川氏の対立候補(特に自民党系が支援する弁護士の丸山彬氏)を支援する動きを加速させることは確実です。これは、前回2024年2月の市長選で小川氏が勝利した最大の要因の一つが「保守層の分裂」であったことを考えると、極めて大きな変化と言えます。前回の選挙では、山本知事と当時の現職との関係のしこりなどが影響し、保守票が分散したことで小川氏が漁夫の利を得る形となりました。しかし、今回の山本知事の「再選阻止」の断言は、保守層に対して明確な指示を与えるものであり、保守票の再結集を促す強力なメッセージとなるでしょう。もちろん、小川氏の実績を評価する層もいますが、山本知事のこの強い姿勢は、前回選挙の構図を完全に覆し、小川氏の再選への道を一段と困難にする要因となるのです。

前回勝利の要因は?小川晶氏が「保守王国」を破り再選を狙う
2024年市長選で現職を破った「地殻変動」の真相
2024年2月の前橋市長選挙で、新人であった小川晶氏が現職の山本龍氏を大差で破ったことは、「保守王国」群馬において「地殻変動」とも呼ばれる衝撃的な出来事でした。群馬県は歴代首相を4人も輩出するほど強固な保守地盤で知られており、県庁所在地である前橋市で、自民・公明両党の推薦を得た現職が完敗することは、誰もが予想しなかった事態です。この異変が起きた真相を分析すると、単に候補者の力量差だけではない、複数の構造的な要因が重なっていたことがわかります。まず、全国的に自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に対する国民の不信感が高まっていた時期であり、有権者が保守政党への批判票を投じる土壌ができていたのです。これに加えて、小川氏陣営が掲げた「市民党」というスローガンと「初の女性市長誕生」というキャッチフレーズが、無党派層や若年層の関心を強く引きました。多くの市民は、長年にわたる現市政に閉塞感を抱いており、小川氏の主張する「クリーンな市政への刷新」に、まさに変化への期待を託したのです。このように、国政の逆風と地方の刷新要求、そしてリベラル系のエースという小川氏自身の魅力が組み合わさったことが、この劇的な結果を生み出した根本的な要因と言えます。
保守分裂と山本市政への「閉塞感」が勝因に
小川晶氏が前回の前橋市長選で勝利できた最大の勝因は、ごく単純に言えば「保守層の分裂」と「現市政への不満の蓄積」でした。本来、強固な組織力を持つ自民党が支援する現職が優位であるはずですが、前橋市では2020年の市長選に続き、保守層のしこりが残っていました。過去の市長選で落選した元職や元県議を支持する保守層が、現職の山本氏への協力を拒否したり、積極的に小川氏を支援したりする動きが見られたのです。「敵の敵は味方」という戦略のもと、小川陣営はこれらの保守層の取り込みを急ぎました。一方で、山本市政は3期12年という長期にわたり、その間に元副市長による官製談合事件などが発生し、市民の間に市政への不信感や「閉塞感」が募っていました。これまでの長期政権への倦怠感も相まって、自民党支持層の一部でさえ、刷新を求める小川氏に投票する「面従腹背」の状態が生まれたのです。小川氏側は、自民党批判をあえて控え、山本市政の負の部分に焦点を当ててクリーンさを訴えることに徹しました。このようにして、長年にわたる保守地盤の火種と、政治資金問題による国政の逆風、そして現市政への批判が、すべて小川氏への追い風となり、結果として大差での圧勝という結果につながったのです。
小中学生の給食費無償化など短い任期の実績
小川晶氏が、辞職という不名誉な形で任期を終えながらも、出直し立候補に踏み切れた根拠として、短い期間ながらも実現させた具体的な実績が挙げられます。前橋市の市長に就任してすぐ、小川氏は主要な公約の一つであった小中学生の給食費無償化を迅速に実現させました。子育て世帯にとって、給食費の無償化は家計に直接的なメリットをもたらす大きな支援策であり、市民生活に寄り添う姿勢を強く印象付けたのです。この他にも、農業支援策など、地域の課題に直接的に対応する政策を打ち出しました。これらの実績は、小川氏の支援者が再出馬を要請する際の最大の根拠となっており、彼らは「市長個人ではなく、彼女が示した市政の方向性を継続すべきだ」と主張しています。いくら不祥事があったとはいえ、市民の一部からは「実際に生活が楽になった」「市政が変わったという実感がある」という評価も存在するため、これらの実績は、小川氏の再選への意欲を支える強力な「追い風」となっている側面があるのです。しかし、短期間での実績が、公私混同という倫理的な問題を相殺するに足るかどうかは、有権者にとって非常に難しい判断を迫る論点となります。有権者は、実績という「公」の功績と、不祥事という「私」の責任を天秤にかけることになります。
新たな対立候補:弁護士と元市議の三つ巴の構図
今回の前橋市長選は、小川晶前市長が出直し立候補する異例の事態に加え、新たな顔ぶれを含む三つ巴の構図となっています。小川氏に対抗するのは、市議会の自民党系二会派が支援する弁護士の丸山彬氏(39歳)と、共産党推薦の元市議である店橋世津子氏(64歳)の新人二名です。弁護士である丸山氏は、若さと法律の専門知識を武器に、小川氏の不祥事に対する批判票や、山本知事が主導する保守層の再結集の受け皿となることが予想されています。山本知事の「再選はあってはならない」という強いメッセージは、保守票を丸山氏へと一本化する強力な圧力として作用するでしょう。一方で、元市議の店橋氏は、長年の議員経験と共産党という明確な支持基盤を持ち、小川氏とは異なる視点からの市政刷新を訴える立場です。特に、前回小川氏を自主的に支援した市民団体の一部票が、今回は店橋氏に流れる可能性も否定できません。このように、小川氏が前回の選挙で味方につけた「保守分裂票」と「リベラル共闘票」の多くが、今回は二人の新人候補に分散することが予想されます。三つ巴の構図になったことで、票の読み合いは一層複雑化しており、小川氏にとっては、前回の勝利時のような強固な足場を築くことが極めて困難な状況となっていると言えます。

増大する外国人課題:不法滞在と公的制度の公平性
前橋市は外国人住民の増加に伴い、単なる共生推進だけでなく、公的制度の公平性と社会秩序の維持に関する課題が、今回の市長選の隠れた争点となる可能性があります。この課題は、山本一太知事が支援する保守層や、市政の安定を求める有権者にとって特に重要視される論点です。例えば、国保(国民健康保険)の未納問題は、多額の未納額が市民全体の負担となりかねず、制度の公平性が問われます。また、不法滞在者が生活している可能性や、運転免許の国際的な制度の違い、さらに自動車の任意保険の未加入による事故時の補償問題など、外国人特有の課題が、地域社会の不安要素として認識されがちです。一方で、小川氏やリベラル系の候補者は、これらの課題を「排除」ではなく、「共生のためのルール周知」や「行政による支援強化」で解決しようと訴えるでしょう。これに対して、保守系の候補者は、「まずは既存の市民生活の安全と、公的制度の厳格な運用」を優先する姿勢を打ち出すことで、現状の行政運営への不満や不安を抱える層の票を取り込むことが可能です。このように、外国人課題への対応は、各候補者の「誰のための市政か」という哲学が最も明確に現れる試金石となり、保守層の票を一本化する上でも重要な影響力を持つことになります。
再選の鍵を握る市民の「資質」と「実績」への評価
今回の前橋市長選挙の再選の鍵は、間違いなく市民が小川氏の「資質」と「実績」のどちらを重く評価するかにかかっています。前述の通り、小川氏には給食費無償化などの具体的な実績があり、これを評価する支援者は市政の継続を強く求めています。しかし、市長としての品位を問われる不祥事を起こし、引責辞職したという事実は、公職者としての「資質」に重大な疑念を投げかけています。有権者の判断は、「政治家個人の倫理的な問題」と「政策実現による市民への利益」という、二つの相反する価値観の間で揺れ動くことになります。多くの市民は、市長には高い倫理観と市民の信頼が不可欠だと考えており、特にご指摘のあった「素直に非を認めない姿」が、再出馬の意欲を「自己保身」と捉えさせる要因となりかねません。言い換えれば、小川氏が前回獲得した「クリーンさ」という最大の武器を、今回の問題で自ら手放してしまったのです。再選を実現するためには、小川氏は不祥事に対する徹底的な謝罪と反省を示すとともに、辞職という責任を取った上でなお、自身の政策が前橋市に不可欠であることを市民に納得させる、強いメッセージが求められます。この「資質」と「実績」の評価のバランスこそが、最終的な投票行動を決定づける最重要ポイントとなるでしょう。
結論:注目の前橋市長選挙の行方はいかに
今回の前橋市長選挙は、初の女性市長の不祥事による辞職と出直し立候補という、極めて異例かつ注目の集まる選挙戦となりました。結論として、前回小川氏が勝利した際の構造(保守分裂と現市政への不信感)が大きく崩れ、再選への道のりは前回以上に困難を極めると言わざるを得ません。前回選挙では、自民党の裏金問題という国政の逆風と、山本市政への閉塞感が小川氏の追い風となりましたが、今回は、小川氏自身が引き起こした「資質」の問題が最大の逆風となっています。山本知事の再選阻止の断言により、保守層の票が弁護士の丸山氏に結集する可能性が高く、小川氏が前回のような票の分散による恩恵を受けることは難しい状況です。いくら給食費無償化などの実績があっても、公職者としての倫理観が問われている以上、浮動票や無党派層の多くは、倫理面でクリーンな新人候補へと流れる傾向が強まることが予想されます。最終的な選挙の行方は、小川氏が不祥事に対する市民の不信感をどこまで払拭できるか、そして、保守票がどれだけ丸山氏に一本化されるかにかかっています。いずれにしても、前回の「地殻変動」とは異なる論点と構図のもと、市民がどのような「公」のリーダー像を選ぶのかが、前橋市の未来を大きく左右する、極めて重要な選択となるでしょう。
前橋市長選:小川晶氏の再選を阻む構造的な課題と行方
- 小川晶氏は2024年2月の市長選で初当選した初の女性市長である
- 既婚男性市職員とのラブホテル面会問題で市長を引責辞職した
- 辞職後、間を置かずに自身の辞職に伴う市長選に出直し立候補を表明した
- 支援者は小中学生の給食費無償化など短期間の実績を評価し市政続行を要請した
- この出直し立候補は「公」の実績と「私」の倫理問題が絡む異例の事態である
- 小川氏の当初の対応が「素直に非を認めない姿」と見なされ、不信感を高めた
- 市長には高い倫理観と市民の信頼が不可欠であり、資質が問われている
- 群馬県の山本一太知事は公的に小川氏の再選阻止を明確に断言した
- 知事の発言は、保守層の票を小川氏の対立候補へ一本化させる圧力となる
- 前回選挙(2024年)の小川氏勝利は、保守分裂と山本市政への閉塞感が主な勝因だった
- 今回は前回と異なり、保守票が自民党系支援の弁護士、丸山彬氏に結集する可能性がある
- 対立候補には丸山彬氏と共産党推薦の元市議、店橋世津子氏がいる
- 選挙の最大の焦点は、市民が小川氏の「資質」と「実績」のどちらを重く評価するかである
- 前回勝利の要因であった「クリーンさ」という武器を小川氏自身が失った
- 三つ巴の構図の中、前回とは異なる論点のもとで再選は極めて困難な状況である
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